本ライブラリは実験的であるため、不具合が多発する可能性が ある。また本ライブラリは無保証で提供される。
本ライブラリは、Emacs に他言語流の正規表現(以下、便宜のため 外来正規表現と記述する)を扱う機能を提供する。
具体的には、外来正規表現を使用可能な `isearch-forward-regexp’、 `query-replace-regexp’、`occur’ 等に相当するコマンドを提供する。
現在のところ、Perl , Ruby, JavaScript, Python の正規表現が 外来正規表現として使用可能である。
本ライブラリは、以下の様に動作する:
- Emacs のユーザー・インターフェースで、外来正規表現による 検索・置換等を指示する。
- 外部コマンド(Perl, Ruby, JavaScript で実装)で検索・置換等 が実行される。
- Emacs のユーザー・インターフェースを通して、検索・置換等の 結果をバッファに適用する。
動作環境として、UNIX 系 OS (*BSD/Linux/MacOSX)、あるいは Windows+Cygwin 上で動作する Emacs を想定している。
外部コマンドとして、perl (5.8以上)、ruby (1.9 以上)、 node (Node.js, JavaScript の正規表現を選択する場合) あるいは Python (2.x系でのみ動作を確認済) のいずれかを必要とする。
また、 `cl’、’menu-bar’、`re-builder’ の feature を必要とする。
Emacs 21以上であれば、良い多言語サポートが期待できるはずである。
- NOTE (Windows ユーザーのみ)
- ウィルス対策ソフトが導入されている環境で、各種 `foreign-regexp’ コマンドの動作が極端に遅くなる場合がある。その場合は、 ウィルス対策ソフトを無効にするか、 `foreign-regexp/tmp-dir’ で 指定されるディレクトリを ウィルススキャンの対象から除外すると 動作が改善する可能性がある。
本ライブラリをインストールするには、 load-path
( C-h v load-path <RET>
で確認可能) で設定されたディレクトリにファイル “foreign-regexp.el” を保存し、
以下の内容を .emacs
に追記する:
(require 'foreign-regexp) (custom-set-variables '(foreign-regexp/regexp-type 'perl) ;; お好みの外来正規表現を指定。 ;; ('perl, 'ruby 又は 'javascript) '(reb-re-syntax 'foreign-regexp)) ;; re-builder で foreign-regexp を使用する。
本使用例では、カレントバッファの内容が
123---789
と仮定する。
M-x foreign-regexp/regexp-type/set <RET> perl <RET>
- NOTE
- 本設定は、 Emacs 終了まで保持される。 Emacs セッションをまたいでの指定は、Customaize を通じて 行うことができる。 “コマンド (1) REGEXP-TYPE の設定” を 参照せよ。
M-s M-% (\d+)---(\d+) <RET> ${1}456${2} <RET>
この操作はバッファ内の文字列
123---789
に対してマッチを発生させ、
123456789
で置換を行う。
- NOTE
置換文字列中の ${1}
と ${2}
は、Perl によって変数展開される。
M-x foreign-regexp/regexp-type/set <RET> ruby <RET>
M-s M-% (\d+)---(\d+) <RET> #{$1}456#{$2} <RET>
この操作はカレントバッファの文字列
123---789
に対してマッチを発生させ、
123456789
で置換を行う。
- NOTE
置換文字列中の #{$1}
と #{$2}
は、Ruby によって String#gsub
メソッド中の置換文字列と同様に変数展開される。
M-x foreign-regexp/regexp-type/set <RET> javascript <RET>
M-s M-% (\d+)---(\d+) <RET> $1456$2 <RET>
この操作はバッファの文字列
123---789
に対してマッチを発生させ、
123456789
で置換を行う。
- NOTE
置換文字列中の変数は String.prototype.replace
メッソッド中の
文字列と同様に変数展開される。
M-x foreign-regexp/regexp-type/set <RET> python <RET>
`M-s M-% (\d+)---(\d+) <RET> \g<1>456\g<2> <RET>'
この操作はバッファの文字列
123---789
に対してマッチを発生させ、
123456789
で置換を行う。
- NOTE
置換文字列中の後方参照は re.sub
メッソッド中の
置換文字列と同様に展開される。
M-x foreign-regexp/regexp-type/set <RET> REGEXP-TYPE <RET>
どの言語流の外来正規表現構文を使用するかを指定する。 デフォルトの状態では、`perl’、`ruby’、`javascript’、`python’ が 選択可能となっている。
カスタマイズを通じて REGEXP-TYPE を指定することも可能である。
M-x customize-apropos <RET> foreign-regexp/regexp-type <RET>
- NOTE
- 各種の `foreign-regexp’ コマンドがミニバッファに 表示するプロンプト中では、編集内容を保ったまま、 他の `foreign-regexp’ コマンドに移行可能となっている。
M-s M-o REGEXP <RET> M-x foreign-regexp/occur <RET> REGEXP <RET>
外来正規表現 REGEXP にマッチするものを持つ行を リスト表示する。
M-s M-% REGEXP <RET> REPLACEMENT <RET> M-x foreign-regexp/query-replace <RET> REGEXP <RET> REPLACEMENT <RET>
外来正規表現 REGEXP にマッチするもののいくつかを REPLACEMENT で置換する。
REPLACEMENT の表記法は、 REGEXP-TYPE により異なる。
M-s M-s M-x foreign-regexp/isearch-forward <RET>
外来正規表現のインクリメンタル検索を開始する。
M-s M-r M-x foreign-regexp/isearch-backward <RET> REGEXP
外来正規表現の逆方向インクリメンタル検索を開始する。
M-s M-f REGEXP <RET> M-x foreign-regexp/non-incremental/search-forward <RET> REGEXP <RET>
外来正規表現 REGEXP を非インクリメンタル検索する。
M-s M-F REGEXP <RET> M-x foreign-regexp/non-incremental/search-backward <RET> REGEXP <RET>
外来正規表現 REGEXP を逆方向に非インクリメンタル検索する。
M-s M-g M-x nonincremental-repeat-search-forward
直前の文字列または正規表現で非インクリメンタル検索を行う。
M-s M-G M-x nonincremental-repeat-search-backward
直前の文字列または正規表現で逆方向に非インクリメンタル検索を行う。
- NOTE
- 検索オプションの状態は、各種の `foreign-regexp’ コマンドが ミニバッファに表示するプロンプト中の指示子によって明示される。 また、バッファ `*RE-Builder*’ では、モードライン中に指示子が 表示される。 検索オプション指示子は、”[isxe]” (Perl向け)、”[imxe]” (Ruby向け)、 “[ie]” (JavaScript向け)、”[ISXe]” (Python向け) という具合に表示される。
M-s M-i M-x foreign-regexp/toggle-case-fold <RET>
検索オプション `case-fold-search’ をトグル(ON/OFF切り替え)させる.
M-s M-m M-x foreign-regexp/toggle-dot-match <RET>
検索オプション `foreign-regexp/dot-match-a-newline-p’ をトグルさせる.
M-s M-x M-x foreign-regexp/toggle-ext-regexp <RET>
検索オプション `foreign-regexp/use-extended-regexp-p’ をトグルさせる.
M-s M-e M-x foreign-regexp/toggle-eval-replacement <RET>
検索オプション `foreign-regexp/eval-replacement-p’ をトグルさせる.
本検索オプションが ON のとき、コマンド `foreign-regexp/query-replace’ の 置換文字列は式として評価される。
例として、次のコマンドを見よ:
- Perl の場合:
M-s M-% ^ <RET> no strict 'vars';sprintf('%05d: ', ++$LINE) <RET>
- NOTE
-
置換文字列は、
e
修飾子が指定された置換演算子(s/PATTERN/置換文字列/e
) 中の置換文字列の様に評価される。 評価される置換文字列中では、$&
,$1
,$2
, …等の特殊変数の参照が可能である。
- Ruby の場合:
M-s M-% ^ <RET> { $LINE||=0;sprintf('%05d: ', $LINE+=1) } <RET>
- NOTE
-
置換文字列は、
String#gsub
メソッドに渡されるブロックと同様に評価される。 その際、マッチ全体の文字列が引数として渡される。 また、ブロック中では、$&
,$1
,$2
, … 等の組み込み変数の参照が可能である。
- JavaScript の場合:
M-s M-% ^ <RET> function (m) {if(typeof(i)=='undefined'){i=0};return ('0000'+(++i)).substr(-5)+': '} <RET>
- NOTE
-
置換文字列は、=String.prototype.replace= メソッドの第2引数として
渡される関数と同様に評価される。
その際、マッチ全体の文字列、キャプチャ 1 〜 n 番目の文字列(キャプチャが
存在する場合)、 マッチ開始位置、検索対象文字列が引数として渡される。
また、関数中では、
RegExp.lastMatch
,RegExp.$1
, …等のプロパティを参照する ことが可能である。
- Python の場合:
M-s M-% ^ <RET> i = 0 C-q C-j def f (m): C-q C-j <SPC> global i C-q C-j <SPC> i=i+1 C-q C-j <SPC> return '%05d: ' % i <RET>
- NOTE
-
マッチオブジェクトを引数に取り、置換文字列を返す関数を
lambda
式あるいはdef
文で指定ことができる。 関数中では、マッチオブジェクトを介してマッチあるいはサブグループを参照できる。(例)
lambda m: m.group(0)
def
文で関数を指定する場合、関数名は任意のものを指定でき、def
文の前後には任意の文を置くことができる。 はじめに現れたdef
文のみが各マッチ毎に実行され、その他の文は置換処理開始前に一度だけ実行される。当初、本ライブラリの実装では
String.sub
メソッド同様、lambda
式のみ受け付ける仕様であったが、lambda
式中では文が書けず変数への代入ができない等の不自由が多いため、def
文も受け付ける 仕様にした。また、def
文で定義した関数中では未初期化のグローバル変数への代入ができないため、 変数等初期化のための文を前後に記述できる仕様とし便宜を図っている。
これらの例は、各行の行頭に行番号を挿入する。
M-x reb-change-syntax <RET> foreign-regexp <RET>
`re-builder’ で外来正規表現を使用するよう指示する。
M-s M-l M-x re-builder <RET>
`re-builder’ による対話的な外来正規表現の作成を開始する。 (`re-builder’ のドキュメントも参照せよ)
- NOTE-1
- `re-builder’ で作成した外来正規表現を各種の `foreign-regexp’ コマンドに適用するには、バッファ `*RE-Builder*’ で以下の コマンドを実行する:
M-s M-o M-x foreign-regexp/re-builder/occur-on-target-buffer
バッファ `*RE-Builder*’ 中の外来正規表現を使用し、 バッファ `reb-target-buffer’ に対して `foreign-regexp/occur’ を 実行する。
M-s M-% M-x foreign-regexp/re-builder/query-replace-on-target-buffer
バッファ `*RE-Builder*’ 中の外来正規表現を使用し、 バッファ `reb-target-buffer’ に対して `foreign-regexp/query-replace’ を 実行する。
M-s M-s M-x foreign-regexp/re-builder/isearch-forward-on-target-buffer
バッファ `*RE-Builder*’ 中の外来正規表現を使用し、 バッファ `reb-target-buffer’ に対して `foreign-regexp/isearch-forward’ を 実行する。
M-s M-r M-x foreign-regexp/re-builder/isearch-backward-on-target-buffer
バッファ `*RE-Builder*’ 中の外来正規表現を使用し、 バッファ `reb-target-buffer’ に対して `foreign-regexp/isearch-backward’ を 実行する。
M-s M-f M-x foreign-regexp/re-builder/non-incremental-search-forward-on-target-buffer
バッファ `*RE-Builder*’ 中の外来正規表現を使用し、 バッファ `reb-target-buffer’ に対して `foreign-regexp/non-incremental/search-forward’ を 実行する。
M-s M-F M-x foreign-regexp/re-builder/non-incremental-search-backward-on-target-buffer
バッファ `*RE-Builder*’ 中の外来正規表現を使用し、 バッファ `reb-target-buffer’ に対して `foreign-regexp/non-incremental/search-backward’ を 実行する。
- NOTE-2
- バッファ `reb-target-buffer’ の検索オプションは、以下の コマンドで切り替えることができる:
M-s M-i M-x foreign-regexp/re-builder/toggle-case-fold-on-target-buffer
バッファ `reb-target-buffer’ の検索オプション `case-fold-search’ を トグルさせる。
M-s M-m M-x foreign-regexp/re-builder/toggle-dot-match-on-target-buffer
バッファ `reb-target-buffer’ の検索オプション `foreign-regexp/dot-match-a-newline-p’ を トグルさせる。
M-s M-x M-x foreign-regexp/re-builder/toggle-ext-regexp-on-target-buffer
バッファ `reb-target-buffer’ の検索オプション `foreign-regexp/use-extended-regexp-p’ を トグルさせる。
M-\ M-x foreign-regexp/quote-meta-in-region <RET>
外来正規表現中で特別な意味を持つ文字をエスケープする。
C-M-| M-x align
事前に定義された文字揃えルールを用いてリージョンの 文字揃えを行う。
文字揃えルール中で外来正規表現を使用するためには、 属性 `regexp-type’ を記述すればよい。
例)
(add-to-list 'align-rules-list '(perl-and-ruby-hash-form ;; 本ルールは `regexp-type' が `perl' または ;; `ruby' である場合に適用される。 (regexp-type . '(perl ruby)) (regexp . "([ \\t]*)=>[ \\t]*[^# \\t\\n]") ;; 外来正規表現 (group . 1) (repeat . t) (modes . '(perl-mode cperl-mode ruby-mode))))
文字揃えルールについてのさらなる情報については、`align-rules-list’、 `align-region’ のヘルプドキュメントを見よ。
M-s M-a REGEXP <RET> M-x foreign-regexp/align <RET> REGEXP <RET>
ミニバッファに入力された外来正規表現 REGEXP に基づいた リージョンの文字揃えを行う。
入力された外来正規表現は、空白文字に続いて マッチするものと仮定される。
コマンド `align-regexp’ も参照せよ。
C-u M-s M-a REGEXP <RET> GROUP <RET> SPACING <RET> REPEAT <RET> C-u M-x foreign-regexp/align <RET> REGEXP <RET> GROUP <RET> SPACING <RET> REPEAT <RET>
ミニバッファに入力された一時ルールに基づいたリージョンの 文字揃えを行う。
例) < 本例では perl 形式の外来正規表現を使用する >
リージョンの内容が以下の内容であるとき: (one 1) (ten 10) (hundred 100) (thousand 1000) コマンド `foreign-regexp/align' を以下のオプションで 実行する: REGEXP: ([ \t]+)\d | +--- GROUP: 1 文字揃えは、キャプチャグループ 1 が マッチした各行の場所に空白文字を 挿入するすることで行われる。 SPACING: 1 REPEAT: y 結果は以下の通りである: (one 1) (ten 10) (hundred 100) (thousand 1000) | +---- SPACING で指定した幅で文字揃えが行われた。
コマンド `align-regexp’ も参照せよ。
以下の4つのコマンド:
`foreign-regexp/replace/external-command’ `foreign-regexp/occur/external-command’ `foreign-regexp/search/external-command’ `foreign-regexp/quote-meta/external-command’
を、あなたのお好みの言語で作成し、これらのコマンドを関数 `foreign-regexp/regexp-type/define’ で組み込む事により、 その言語の正規表現を使えるようになるかもしれない。
更なる情報については、これらの変数・関数の ヘルプドキュメントを参照せよ。
- ドキュメントの内容については再考の余地がある。 (特に英語版については)
- History for `re-builder’.
- `grep’ with foreign regexp?
- `tags-search’, `tags-query-replace’, `dried-do-search’ and `dired-do-query-replace-regexp’ with foreign regexp?
- `multi-isearch-buffers-regexp’, `multi-occur’, `multi-occur-in-matching-buffers’, `how-many’, `flush-lines’, and `keep-lines’ with foreign regexp?
- Better error messages.
- Write Tests.