圏$\mathscr{C}$から圏$\mathscr{S}$への 反変函手 (contravariant functor)とは、函手$\mathscr{C}^{\mathrm{op}}\rightarrow\mathscr{S}$のことである。この文脈で通常の函手のことを共変函手とも言うが、本稿では「函手」という用語のみを用いることにする。反変・共変といった区別は口頭なら便利だが、記法としてはややこしい。
定義
前層の圏は、元の圏$\mathscr{C}$に$\mathbf{Set}$の構造を付与して膨らませたものと解釈できる。実際、後述する米田の補題は、圏$\mathscr{C}$が$\mathbf{Psh}(\mathscr{C})$に忠実充満に埋め込めることを主張する。このように元の構造を残したまま世界を広げることでこれまで見えてなかったものが見えるようになる。
- 対象$X\in\mathscr{C}$に対して、$h_{U}X:=\mathrm{Mor}_{\mathscr{C}}(X, U)$とする。
- 射$\rho\colon X\leftarrow Y$に対して、$h_{U}\rho\colon\mathrm{Mor}{\mathscr{C}}(X, U)\rightarrow\mathrm{Mor}{\mathscr{C}}(Y, U)$を$f\mapsto f\circ\rho$とする。
このとき$h_{U}$は$\mathscr{C}$の前層となる。つまり$h_{U}\colon\mathscr{C}^{\mathrm{op}}\rightarrow\mathbf{Set}$は函手である。
次に$\phi\colon U\rightarrow V$を射とする。対象$X\in\mathscr{C}$について$(h\phi){X}\colon h{U}X\rightarrow h_{V}X$を$f\mapsto \phi\circ f$とする。このとき$h\phi\colon h_{U}\rightarrow h_{V}$は自然変換となる。
実際、射$\rho\colon X\leftarrow Y$について以下の図式が可換となる。
つまり$f\in h_{U}X$に対し、$h_{V}\rho\circ(h\phi){X}(f)=h{V}\rho(\phi\circ f)=\phi\circ f\circ\rho$であり、$(h\phi){Y}\circ h{U}\rho(f)=(h\phi)_{Y}(f\circ\rho)=\phi\circ f\circ\rho$より一致する。
このとき以下で定まる$h\colon\mathscr{C}\rightarrow\mathbf{Psh}(\mathscr{C})$は函手である。
- 対象$U\in\mathscr{C}$に対し、$h_{U}\in\mathbf{Psh}(\mathscr{C})$を対応させる。
- 射$\phi\colon U\rightarrow V$に対し、自然変換$h\phi\colon h_{U}\rightarrow h_{V}$を対応させる。
定義
LaTeXソース
% プリアンブル
\usepackage{amsmath, amssymb, mathrsfs}
\usepackage{tikz-cd}
% psh_01.svg
\begin{tikzcd}[contains/.style = {phantom, "\ni", sloped}]
X & FX \arrow[d, "F\rho", ""'{name=V}] \\
Y \arrow[u, "\rho", ""'{name=U}] & FY
\arrow[from=U, to=V, "F", dashed]
\end{tikzcd}
% psh_02.svg
\begin{tikzcd}[contains/.style = {phantom, "\ni", sloped}]
X & h_{U}X \arrow[d, "h_{U}\rho"'] \arrow[r, "(h\phi)_{X}"] & h_{V}X \arrow[d, "h_{V}\rho"] \\
Y \arrow[u, "\rho"] & h_{U}Y \arrow[r, "(h\phi)_{Y}"'] & h_{V}Y
\end{tikzcd}